第4話
嵐のような出会い

丘を降りて、学園へと歩く葉一と梢。

葉一「あれが明星学園か…敷地も広いし、校舎も大きくて綺麗だな…」

坂を下りながら、葉一は眼下に広がる学園を見ていた。

梢「うん、大きいよね。何で見えなかったのかな…」

葉一「だから、その話はもういいだろ。手繋いでやったんだから…」

結局、二人は手を繋いで歩いていた。

梢が 『学園を無視して丘に来た理由を話すか、手を繋ぐか、どっちか選んで!』

なんて言うから、葉一は仕方なく梢と手を繋いだわけだ。

梢「だって、気になるんだもん」

葉一「そんなに言うならやめるぞ」

梢「じゃあ、話して」

葉一「勘弁してくれよ…」

他愛のない会話をしながら、開いている学園の門をくぐる二人。

梢「ようこそ、明星学園へ。霧羽葉一君。これからよろしくね♪」

いきなり、梢はおどけて挨拶する。

葉一「…こちらこそ、よろしく。鷹坂梢さん」

二人して微笑み合った瞬間、校舎の方から凄まじい勢いで走ってくる人影が見えた…

(…何故か殺気を感じるのは気のせいか?)

走って来る人影は、梢と同じ制服を着ていた。

どうやらここの生徒らしい。

(って、あの勢いだと……ヤバイ!)

とっさに梢から離れ、荷物を降ろし構える。

女生徒「てぇりゃーーー!!死ね、害虫!」

走って来た勢いで放たれたラリアットを、葉一はギリギリで躱す。

葉一「いきなり何すんだ!危ないだろ…」

梢「栞ちゃん!?」

栞「何で避けるのよ!」

ショートカットで眼鏡をかけた女の子が、殺気に満ちた形相で葉一を睨む。

葉一「当たり前だろ、当たったら痛いじゃないか!」

栞「アタシの梢に近付くなんて、即抹殺よ!」

梢「私、いつから栞ちゃんのものになったの…?じゃなくて、私の話を聞いてよ!」

どうやら二人は知り合いらしい。しかし栞という女の子は、梢の話をまったく聞いてな い。

栞「梢…アンタ、泣いてたわね。跡が残ってるわ。コイツに泣かされたのね!きっと酷い 事されたのね…安心しなさい、アタシが仇を討ってあげる!!」

梢「確かに泣いたけど…って話を聞いてよぉ」

葉一「確かに梢を泣かせたのは俺かも…って待て待て!!誤解だ!」

栞「認めたわね!問答無用!!チェストォーー!!!」

鋭い手刀が葉一の頭にヒット……する瞬間。葉一は真剣白羽取りで受けた。

栞「くっ!やるわね…アタシの手刀を受け止めるなんて…」

間合いを取り、再び攻撃しようとする栞の前に立ちはだかる梢。

梢「だから話を聞いて!この人は私の幼馴染みの葉ちゃんだよ!」

栞「へ?…アタシの可愛い梢を、毒牙にかけたんじゃないの?」

梢「だから、私は栞ちゃんのものじゃないってぇ〜…」

梢はあの丘での顛末を、事細かに栞に説明した。

梢「……というわけ、わかった!?」

栞「なぁんだ、そうだったの!違うなら最初からそう言ってよ」

鬼のような表情だったさっきとは、まるで違う…明るい女の子になっていた。

葉一「だから待てって言っただろ。それに、凄い勢いで突っ込んで来たのは誰だ?」

栞「あはは〜、ゴメンね♪なんか勘違いだったみたいだから、許して♪」

葉一「勘違いで殺されたらたまんないよ…」

(なんか疲れた…)

栞「しっかし、アタシの手刀を止められたのは初めてだよ!…梢から聞いてた通りね」

葉一「俺の事知ってたのか?」

栞「梢がよく話してたのよ。…カッコイイ幼馴染みがいるってね♪ね、梢?」

梢「ちょ、ちょっと栞ちゃん!それはナシだってば〜」

(一体何を話してたんだ?)

梢のことだから、かなりおおげさに話してそうで、不安な葉一だった…

栞「ふーん、……ナルホド……よし!」

葉一の周囲を回りながら観察する栞。

葉一「な、なんだ?」

栞「合格よ!アンタになら梢を譲ってもいいわ!」

葉一&梢「はぁ?」

栞「実は梢ってモテるのよ。でも可愛い梢とそこらの凡人が釣り合うわけじゃないし。アタシがテストしてたのよ」

葉一「テストって、あれがか?」

さっきの攻防を思い出すが、どう見ても群がる害虫を退治しにきたとしか思えない…

栞「それに…実は一人しつこいのがいてね…」

?「梢ちゅわ〜ん!」

栞が言うやいなや、栞が来た方向とは反対側から走って来る人影。

(またか…今度は男だな……って、オイ!)

これまたぶつかりそうな勢いで、走って来る明星学園の制服を着た男。

その先には梢が。

梢を庇おうと、梢と男の間に立ちはだかる葉一。

だがそれより先に栞が動いていた。

栞「また来たわね!この害虫の親玉!!」

男「ぐほっ!!」

カウンターで放たれた栞のラリアットを、男はまともに受けた…

栞「まったく…ぜんっぜん懲りてないわね、香介?」

香介「お前こそ、いいかげんに俺と梢ちゃんの仲を認めるんや!」

栞「アンタじゃ駄目よ。…それに、もう梢の側には彼がいるから♪」

そう言って葉一を見る栞と、香介という男。

香介「なんやて!栞、これはどういうことや!?」

栞「そこの葉一君は、アタシのテストに合格したんだから」

(テスト…ね)

香介「お前、葉一言うたな?俺と勝負や!俺が勝ったら、梢ちゃんは俺のもんや!」

葉一「はぁ?…面倒臭いな…別にいいだろ」

香介「ちっとも良くないわ!俺とタイマンで勝負や!」

栞「止めたほうがいいわよ…彼、私のラリアットを避けて、手刀を受け止めたんだから」

香介「なんやて!?あの『脳天唐竹割り』をか……今日のところは、これくらいで勘弁し たるわ!」

栞「まあ、アホはほっといて…自己紹介がまだだったわね。アタシは三重野栞。梢の親友 よ」

香介「誰がアホや!まあええわ…俺は三原香介や」

葉一「あ、ああ。俺は霧羽葉一。よろしく」

栞「葉一君って呼ぶわね。アタシの事は栞でいいわ、三重野じゃ堅苦しいしね。…コイツ は害虫でいいわよ♪」

香介「誰が害虫や!!…俺の事は香介でええで、よろしくな葉一」

葉一「ああ、よろしく。栞、香介」

(なんだか凄い連中だな…)

梢に耳打ちする葉一

(あ、あはは…)

乾いた笑いしか出ない梢

(退屈しないな)

何故か嬉しい葉一だった…


第4話  完

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