第6話
先生は強敵?

?「さっきから何やってんだ。少しは静かにしろ、近所迷惑だぞ!」

栞が香介を連行してきたら、いきなり声がした。

梢「あの声は…武宮先生?」

武宮「相変わらず騒々しい二人だな。そんな元気があるなら、俺の相手でもしてくれよ」

現れたのは、30歳くらいの男だった。どうやら教師らしいが、無造作にまとめられた髪型と半袖のTシャツ姿では、とてもそうは見えない。

栞「いや〜、今日こそ香介の馬鹿を更生しようと思ったんですけどね。コイツしぶといですから」

香介「お前のは更生やない、ただの暴力や!俺でストレス発散しとるんやないか?」

栞「アタシにストレス溜めさせてるのは誰よ!?もう一回やる?」

武宮「だから止めろって。何なら俺が相手になるぞ」

途端に大人しくなる二人

(この二人が…そんなに恐いのか、この先生)

武宮「ん、お前は誰だ?」

葉一「渡之原高校から転校してきました、霧羽葉一です。よろしくお願いします。」

礼儀くらいはと、丁寧に頭を下げる葉一。

武宮「俺にそんな礼はいらないぞ。そうかお前が転校生か。…ちょっくら荷物検査でもするか」

(ヤバイ、家宝の剣を見られたら…)

間違いなく没収されるだろう。もしかしたら転校早々、退学の可能性が…

武宮「その背中の物は何だ?」

葉一「あ、いや、その…」

どうすればいいのか、葉一が慌てていると…

武宮「…ぷっ、ははははっ!…そう焦るな、冗談だ。お前の事は、霧羽のじいさんから聞いてるよ」

葉一「え?じいちゃんを知ってるんですか?」

武宮「ああ、以前ちょっとな。今日の昼頃に電話してきたよ。『孫を頼む』とな。その背中の物の事も聞いてる。心配するな、俺は男子寮の責任者だからな。俺が目をつぶれば問題ない」

葉一「はぁ…いいんですか?」

武宮「ああ。とにかくよろしくな、葉一。俺は武宮将悟、世界史を教えてる」

葉一「あ、はい。よろしくお願いします」

武宮「だから、俺にはそんな丁寧な礼はいらないって。そういうところは、じいさんそっくりだな。そういえば…お前も剣が使えるんだってな。相当の腕前だって聞いてるぞ」

葉一「いえ、俺なんか。一人前の剣士になるには、まだまだ修行が足りないですよ」

武宮「そう謙遜するな。自信も時には大切だぞ。…どうだ、俺と試合してみないか?」

葉一「え?先生も剣を」

武宮「ああ。だけどこの学園じゃ、俺の相手になる奴はいないからな。物足りないんだよ」

葉一「え?いや、しかし…」

梢「先生、葉ちゃんは疲れてますから。また今度にしませんか?」

助け船を出してくれる梢。

武宮「それもそうだな。…しかし梢?」

梢「はい、何ですか?」

武宮「『葉ちゃん』て呼ぶなんて、お前ら恋人同士か?」

梢「うぇっ!?えっと、その、葉ちゃんとは幼馴染みで、えっと…」

葉一「そ、そうですよ。梢は別に恋人とかじゃなくて、その…」

先生の問いに焦る二人は、上手く口が回らない。

武宮「二人とも、耳まで真っ赤だぞ。そんなに慌てるな、冗談だ。しかし、恋愛は大いに結構!頑張れよ、じゃあな〜♪」

笑いながら去って行く先生。

葉一「なんか変わった先生だな…」

梢「うん。でも、生徒からは人気あるみたいだよ。堅苦しい人じゃないからね」

葉一「その割に、栞と香介は苦手みたいだが?」

香介「おっちゃんの相手させられたんや…」

げんなりした表情で話す香介。

香介「武宮のおっちゃんの剣の腕前は普通やない…打ち込んでも全部受け流されて、反対にやられるんや。俺が何回ボコボコにされたか…思い出したないわ…」

栞「アタシも何回か試合したけど、全然相手にならない。お互い素手なのに、一発も当たらないの。必殺の手刀も躱されて…」

(栞の手刀を躱せるのか…かなりの腕前だな。確かに栞の動きは直線的だから、見切ってしまえば出来ないこともないが…あのスピードを上回らないと、躱すのは難しい。受け止めたほうがまだ確実だ)

真剣な表情で思索にふける葉一。

(勝てるのか、俺)

先生の強さに不安になる葉一。

梢「葉ちゃんならきっと勝てるよ!私、信じてるから」

梢はそうやって葉一を励ました。葉一を信じているからこそ、頑張ってほしいのだ。

葉一「ああ、ありがとう梢。なんか、励まされてばっかりだな、俺。情けないよ」

梢「そんなことないよ。葉ちゃんは昔よく私を助けてくれたから、私も葉ちゃんの力になりたいの。……迷惑かな?」

葉一「とんでもない…嬉しいよ」

武宮「熱いな、お二人さん♪」

いきなりやってきた先生に、二人はビックリ。

葉一「せ、先生!おどかさないで下さいよ。まったく…」

武宮「悪い悪い、そんなつもりじゃなかったんだが。二人の世界に入ってるから、声かけづらくてな」

梢「…何の用ですか?」

何故か不機嫌な梢。

武宮「拗ねるな。いや、言う事あったの忘れててな。配送された葉一の荷物が届いてるから、部屋に運んでおけよ。部屋は香介と同じだ、手伝ってやれよ。荷物は事務棟の一階の空き部屋にあるから。じゃな♪」

伝える事だけ伝えてさっさと帰る先生。

葉一「香介と相部屋か。よろしくな」

香介「おう!こっちこそ、よろしくや」

栞「じゃあ、さっさと運びましょ。四人でやれば早く済むわ」

梢「そうだね。早く行こうよ、葉ちゃん」

葉一「わかったから、引っ張るな!…男子寮はあっちか。女子寮とは反対側なんだな」

栞「当たり前よ。馬鹿は星の数ほどいるからね…」

栞は香介を睨んで呟く。

(なんとなく、何をしたかわかった…)

梢「私は栞ちゃんと相部屋だから。これでみんな一人で寂しくなんてないね♪」

香介「そうやな。どうせなら、みんなで同じ部屋に寝るってのもええんやない…うごはぁっ!!」

栞のボディブローが炸裂した…

栞「まだ懲りてないわね…何なら、アタシと同じ部屋でもいいのよ」

香介「いや、遠慮しとくわ…栞の寝相が悪うて体がもたんがな…ぶふぉっ!」

(ホントにいつか死ぬかもしれんな…)

心の中で合掌して冥福を祈る葉一。

先に行く二人の後ろで、何が起こっているかは…あえて言うまい。


第6話  完

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